デジタル庁の松本大臣は2026年7月10日の記者会見で、若手国家公務員によるワークショップの開催結果と、ガバメントAI「源内」における国産クラウド上での国産基盤モデルの試用開始を発表しました。国産クラウド上で国産の大規模言語モデルを稼働させる初めての取り組みです。
主なトピック
- 7月8日に若手国家公務員によるワークショップを開催(12省庁から約40名が参加)
- ガバメントAI「源内」で国産クラウド上での国産基盤モデルの試用開始を発表
- さくらのクラウド上で NTTデータ・富士通・Preferred Networks の3モデルを2026年8月までに稼働予定
- 国産基盤モデルの有用性・信頼性・経済性を検証し、利用促進・性能向上・需要創出につなげる方針
- 質疑応答では源内で試用する国産基盤モデルが5社体制となった経緯を説明
詳細
若手国家公務員によるワークショップを開催
松本大臣は国家公務員制度担当大臣として、7月8日に国家公務員の働きがい向上に向けた若手職員によるワークショップを開催したと報告しました。大臣自身の提案によるもので、オンライン参加を含め12省庁から約40名が参加し、「なぜ国家公務員として働き続けるのか」「今後も働き続けるには何が必要か」をテーマに7つのグループが意見交換と発表を行いました。
参加者からは、上司とのコミュニケーションの難しさ、自分の仕事が何の役に立っているのか見えにくいこと、5年後・10年後のキャリアを見通しにくいことなどの悩みが挙がりました。大臣はこうした声を今後の施策に反映させたいと述べ、ワークショップの継続や管理職側との意見交換にも意欲を示しました。
国産クラウド上での国産基盤モデルの試用を開始
ガバメントAI「源内」に関する新たな取り組みも発表されました。デジタル庁は政府職員18万人が源内を利用できるよう順次アカウントを付与しており、この環境で国内開発の大規模言語モデルを試行的に利用します。
具体的には、唯一の国産ガバメントクラウドである「さくらのクラウド」上で、NTTデータ・富士通・Preferred Networks の3社の国産基盤モデルを2026年8月までに稼働させます。さくらのクラウドがガバメントクラウドとして実利用される第1号案件です。残る2社のモデルは、さくらのクラウド上に対応するメニューがないため、引き続き海外クラウド上で利用されます。
松本大臣は、国産のみで構成した環境で国産基盤モデルの有用性・信頼性・経済性を検証し、安心安全な国産 AI の利用促進、性能向上、国産 AI への安定的な需要の創出につなげたいと述べました。また、同日のAI基本計画に関する会議で総理から「AX はまず行政から始めてほしい」との趣旨の発言があったことに触れ、今回の取り組みがその先陣を切るものになるとの認識を示しました。
質疑応答: 5社体制となった経緯
当初7社が選定されていた国産基盤モデルが3社となった理由を記者に問われた松本大臣は、7社のうち2社が先方の事由により参加せず現在は5社体制であり、今回の3社はそのうちさくらのクラウド上で稼働させる分だと説明しました。国産の言語モデルで源内を運用するのは5社全体で変わらないとしています。
用語解説
ガバメントAI「源内」
デジタル庁が整備を進める政府共通の生成 AI 利用環境です。全府省庁の職員約18万人を対象に順次展開されており、2026年3月には試用する国産大規模言語モデル7件が選定されました。
国産基盤モデル
国内企業が開発した基盤モデル(大規模言語モデルなどの汎用 AI モデル)です。今回は NTTデータの「tsuzumi 2」、富士通の「Takane」、Preferred Networks の「PLaMo 2.0 Prime」の3モデルがさくらのクラウド上で試用されます。
さくらのクラウド
さくらインターネットが提供するクラウドサービスです。2026年3月にガバメントクラウドの技術要件をすべて満たして正式に採択された、唯一の国産ガバメントクラウドです。
国家公務員制度担当大臣
国家公務員の人事制度などを担当する大臣です。松本大臣はデジタル大臣などと兼務しており、今回のワークショップはこの立場での取り組みです。
AI基本計画
政府の AI 政策の指針として2025年12月に初めて閣議決定された計画(人工知能基本計画)です。2026年7月10日の人工知能戦略本部の会議で改定案が決定され、行政を先頭にした AX(AI トランスフォーメーション)の推進が打ち出されました。
Vecta の視点
今回の発表で注目したいのは、クラウド基盤と AI モデルの双方を国産で揃える「インフラ単位での国産化」に踏み出した点です。データの所在や運用ルールを自国でコントロールできるかどうかは、機密性の高い情報を扱う行政の現場に限らず、今後の公共 AI 活用全般でたびたび論点になっていくテーマだと考えています。もっとも、国産であること自体が信頼を保証するわけではなく、実際の業務でどれだけ正確に、人の判断を置き換えることなく使える AI かが今後問われていくはずです。Vecta も、地域や行政に眠る知識を AI が扱える形に整理し、人の判断を支える公共性のある AI づくりを目指しており、こうした「安心して使える公共 AI 基盤」が広がる動きを注視していきます。
出典
- 動画: 松本大臣記者会見(令和8年7月10日)
- チャンネル: デジタル庁 YouTube チャンネル
