デジタル庁の松本大臣は2026年6月12日の記者会見で、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」の改定(第2.0版)と、サイバー安全保障担当大臣として「政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン」の改定を発表しました。生成AIの活用拡大とセキュリティ対策強化を両立させる内容です。

主なトピック

  • 生成AI調達・利活用ガイドラインを第2.0版に改定し、適用対象をテキストから音声・画像出力やAIエージェントにも拡大
  • 知的財産権等の保護に関する記載を拡充
  • AIエージェントを先進的AI利活用アドバイザリーボードへの報告対象に追加
  • サイバー安全保障担当大臣として「政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン」も改定し、必要に応じたシステム運用の一時停止を含む脆弱性対応の強化を明記
  • 質疑応答では、各省庁へのパッチ適用徹底の呼びかけ、ガバメントAI「源内」の展開状況、AI人材育成における民間連携の重要性を説明

詳細

生成AI調達・利活用ガイドラインの改定

松本大臣は、2025年5月に策定した本ガイドラインを、生成AIの技術進歩とユースケースの拡大に合わせて改定したと説明しました。主な改定点は、従来のテキスト生成に加えて音声・画像出力にも適用対象を広げたこと、知的財産権等の保護に関する記載を拡充したこと、AIエージェントについても先進的AI利活用アドバイザリーボードへの報告対象に加えたことの3点です。AIエージェント導入の進展に伴うガバナンス強化やセキュリティ対応の必要性を踏まえ、利活用促進とリスク管理を両立する形での改定だと位置づけています。

サイバーセキュリティ対策基準の改定

サイバー安全保障担当大臣としては、「政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン」も同日改定・公表したと発表しました。政府横断のサイバー防御強化策「Project YATA-Shield」の取りまとめを踏まえ、セキュリティパッチの迅速な適用が必要な場合には情報システムの運用を一時的に停止することも含め、生成AIの悪用リスクに備えた耐性強化を盛り込んだとしています。

質疑応答: 各省庁への呼びかけと源内の活用状況

記者からの質問に対し、大臣は各省庁に脆弱性情報の共有と着実なパッチ適用を求めるとともに、必要な場合はシステム停止も辞さないトップのリーダーシップの重要性を強調しました。またガバメントAI「源内」については、職員18万人全員へのアクセス権付与がまだ完了していない段階であるとした上で、現場の課題を踏まえて今後もガイドラインを適宜見直していく考えを示しました。AI利活用を支える人材育成については、サイバーセキュリティ分野のフレームワーク整備に加え、民間人材との連携を進める方針を述べました。

用語解説

生成AI調達・利活用ガイドライン

正式名称は「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」です。各省庁における生成AIのガバナンスや調達・利活用ルールを定めるもので、2025年5月に策定され、2026年6月に第2.0版へ改定されました。

先進的AI利活用アドバイザリーボード

各省庁の生成AI・AIエージェントの利活用状況を確認し、リスク事案の報告を受けて再発防止策を検討する有識者会議体です。今回の改定でAIエージェントの活用もこのボードへの報告対象に加えられました。

政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン

政府機関等の情報セキュリティ水準を統一的に高めるための基準群(政府統一基準群)の一つです。2026年6月の改定では、脆弱性対応の強化など生成AIの悪用リスクを踏まえた対策が盛り込まれました。

Project YATA-Shield

高性能AIの悪用リスクを踏まえたサイバー防御力強化のため、2026年5月にデジタル庁を含む14の府省庁・機関が連携して取りまとめた政策パッケージです。重要インフラ事業者・政府機関等・ソフトウェア・ベンダそれぞれに向けた対策強化を盛り込んでいます。

Vecta の視点

今回の改定で印象的なのは、生成AIの活用範囲を音声・画像出力やAIエージェントにまで広げる一方で、知的財産権の保護や有識者会議体(先進的AI利活用アドバイザリーボード)への報告体制もあわせて強化している点です。利活用の加速とガバナンスの強化を両輪で進める姿勢は、AIを公共領域で使い続けてもらうために欠かせない「信頼の設計」だと捉えています。サイバーセキュリティ対策基準の改定で触れられた「必要に応じてシステムを一時停止する判断」も、利便性だけを優先しない姿勢の表れだと感じます。Vectaも、地域や行政に眠る知識をAIが扱える形に整理するにあたり、便利さだけでなく、どこまでを人の判断に委ね、どこからをルールで支えるかという線引きを丁寧に設計することを大切にしており、こうしたガイドライン整備の動きを継続して注視していきます。

出典